警視庁のSPI3試験は、令和8年度の通常回では教養試験との選択制です。Ⅰ類は70題・70分、Ⅲ類は90〜95題・70分のペーパーテスト。合格に必要な正答率や「ボーダー」は警視庁から公表されていません。問題形式を知り、時間を測った演習と論文・面接まで含めた準備が必要です。
本記事は警視庁の令和8年度採用案内と令和9年度前倒し試験の案内を基準に、元警視庁警察官の講師が、公開情報と学習上の助言を区別して解説します。制度・日程は出願前に必ず公式ページで再確認してください。
警視庁SPI3の試験方式と令和8年度の実施内容
警視庁の採用案内では、通常回の第1次試験における筆記試験は、出願時に教養試験かSPI3基礎能力検査を選択します。SPI3はテストセンターや自宅受検ではなく、指定会場でのペーパーテスティングです。区分ごとの題数・時間は次のとおりです。
| 受験区分 | SPI3基礎能力検査 | 実施方式 |
|---|---|---|
| Ⅰ類 | GAT-U/70題・70分 | ペーパーテスティング |
| Ⅲ類 | GAT-H/90〜95題・70分 | ペーパーテスティング |
出典:警視庁「令和8年度警察官採用試験」。第1次試験には筆記のほか適性検査(記述式等)などがあり、第2次試験にも適性検査があります。SPI3の名称だけで試験全体を判断せず、区分・回次ごとの案内を確認してください。
SPI3方式の採用予定人員(令和8年度)
教養試験とSPI3では、採用予定人員が別枠で示されています。令和8年度は全体1,450名のうち、SPI3方式は男性410名・女性170名です。
| 区分 | 教養試験 | SPI3 | 計 |
|---|---|---|---|
| Ⅰ類・男性 | 430名 | 290名 | 720名 |
| Ⅰ類・女性 | 180名 | 120名 | 300名 |
| Ⅲ類・男性 | 180名 | 120名 | 300名 |
| Ⅲ類・女性 | 80名 | 50名 | 130名 |
枠の大きさだけで有利・不利は決まりません。受験者数も方式ごとに変わるからです。どちらを選ぶかの判断基準は教養試験とSPI3の選び方で整理しています。
令和9年度前倒し試験はⅠ類・SPI3を指定
令和9年度の前倒し試験はⅠ類で、申込期間は令和8年11月2日〜27日、第1次試験は令和9年1月10日です。筆記はSPI3基礎能力検査(GAT-U、70題・70分)と論文試験で、教養試験との選択制ではありません。通常回の制度や日程と混同しないでください。出典:警視庁「令和9年度前倒し試験」。
SPI3は何が出る?言語・非言語の準備
警視庁の案内では、SPI3(基礎能力検査)は「言語的理解力や数的処理能力、論理的思考力等についての択一式の検査」とされています。大きく分けると、国語系の言語分野と数学系の非言語分野です。教養試験より範囲が狭いぶん、捨て分野を作らず、まんべんなく得点できる状態を目指します。SPI3一般の方式は提供元リクルートの案内も参照できます。
- 言語:短い設問で語句の関係や文章の意味を正確に捉える。間違えた原因を語彙・読み違い・時間切れに分けて復習する。
- 非言語:割合・速さ・条件整理など、問題文から図表や式へ変換する練習をする。計算ミスと解法ミスを区別する。
- 時間管理:70分で全体を解く形式に慣れる。1問に固執せず、解ける問題から処理する。
ここからは、SPI3の能力検査で一般的に出題される分野と、私が受験指導で伝えている解き方の要点をまとめます。警視庁は分野別の出題数を公表していないため、「この分野が必ず出る」という意味ではありません。市販のSPI3問題集(ペーパーテスティング対応のもの)を1冊決め、下の分野を一通り解ける状態にするのが出発点です。
言語分野の頻出テーマと解き方
言語は、語彙の知識で即答する問題と、文章を読んで判断する問題に分かれます。知識問題を短時間で片づけ、長文に時間を残すのが基本です。
| 分野 | 問われること | 解き方の要点 |
|---|---|---|
| 二語の関係 | 2つの語の関係(包含・対立・役割・原料など)と同じ関係の組を選ぶ | 「AはBの一種」「AはBのために使う」と短い文に直してから選択肢に当てはめます。 |
| 語句の意味・用法 | 語句の意味に合う言葉、同じ用法の文を選ぶ | 知らなかった語はその日のうちにノートへ。用法問題は別の言葉に言い換えて比べます。 |
| 文の並べ替え | ばらばらの文・文節を意味が通る順に並べる | 指示語と接続語を手がかりに「必ず隣り合う組」を先に作り、全体を組み立てます。 |
| 空欄補充 | 文脈に合う語句・接続語を入れる | 空欄の前後だけで判断し、順接か逆接か、言い換えかを見極めます。 |
| 長文読解 | 本文の内容と合うもの、筆者の主張を選ぶ | 設問を先に読み、探す情報を決めてから本文へ。逆接の接続語の後ろは主張が出やすい箇所です。 |
間違えた問題は「語彙不足」「読み違い」「時間切れ」のどれが原因かを分けて記録してください。語彙不足なら暗記、読み違いなら設問の読み方、時間切れなら解く順番と、打つ手がまったく違うからです。
非言語分野の頻出テーマと解き方
非言語は中学〜高校1年程度の数学が土台です。難問はほとんどなく、問題文を図・表・式に素早く直せるかで差がつきます。
| 分野 | 問われること | 解き方の要点 |
|---|---|---|
| 推論 | 順位・位置・内訳などの条件から、確実に言えることを選ぶ | 条件を頭の中で追わず、表や数直線に書き出します。「必ず正しい」と「あり得る」を区別します。 |
| 割合・比 | 濃度、増減率、人数の内訳など | 「全体はどれか」を最初に決めます。割合は小数か分数のどちらかに統一して計算します。 |
| 損益算 | 原価・定価・売価・利益の関係 | 原価を100(または1)と置き、定価・売価を順に式で表します。 |
| 速さ | 旅人算、出会い・追いつき、平均の速さ | 線分図を描き、単位(分と時間、mとkm)を先にそろえます。 |
| 仕事算 | 複数人・複数台で仕事を終える日数 | 全体の仕事量を1と置き、1日あたりの仕事量を分数で表します。 |
| 集合 | 2〜3項目の該当者数 | ベン図か表で整理し、「どちらにも当てはまらない人」を書き忘れないようにします。 |
| 場合の数・確率 | 並べ方、選び方、くじ・サイコロ | 順列と組合せを使い分けます。「少なくとも1つ」は1から余事象を引く方法が速いです。 |
| 表・グラフの読み取り | 資料から数値や割合を計算する | 設問を先に読み、必要な行と列だけを見ます。概算で選択肢を絞れる問題も多いです。 |
復習では「解法の選択ミス」「条件整理のミス」「計算ミス」を分けて数えます。同じ型を3回続けて制限時間内に解けたら、その分野は一区切りと考えてかまいません。
時間配分:Ⅰ類は1問約60秒、Ⅲ類は約45秒
警視庁のSPI3で最も手ごわいのは、問題の難しさよりも時間です。公式の題数と時間から単純計算すると、1問あたりに使える時間は次のとおりです。
| 区分 | 題数・時間 | 1問あたりの目安 |
|---|---|---|
| Ⅰ類(GAT-U) | 70題・70分 | 約60秒 |
| Ⅲ類(GAT-H) | 90〜95題・70分 | 約44〜47秒 |
- 語彙系の問題は短く:二語の関係や語句の意味は、知っていれば数十秒で解けます。ここで時間を貯金します。
- 1問に固執しない:推論や長文で手が止まったら印を付けて次へ進み、最後に戻ります。
- マークのずれを防ぐ:ペーパーテストでは、問題を飛ばしたときのマーク位置のずれが大きな失点になります。大問ごとに番号を確認します。
- 時計を見る位置を決める:全体の3分の1、3分の2の地点で経過時間を確認し、遅れていれば解く順番を切り替えます。
言語と非言語の出題順や時間の区切り方は、当日の指示に従ってください。練習の段階では、言語・非言語を通しで70分解く日と、分野別に短い時間で解く日の両方を作ると、本番の時間感覚が身につきます。
SPI3とは別に「適性検査」もある
警視庁の令和8年度案内は、SPI3を「基礎能力検査」と記載し、それとは別に「適性検査」を試験科目として列挙しています。SPI3という一般的なサービス名から警視庁の全試験科目を推定できません。「性格や資質を見られない」と解釈せず、公式の科目表示に従いましょう。
警視庁SPI3の合格ボーダー・正答率は公表されている?
いいえ。警視庁の採用案内には、SPI3の合格最低点や必要正答率が示されていません。ネット上の特定の正答率を「合格ライン」「安全圏」として扱う根拠はありません。問題の難易度や採用人数は年度・区分で変わり、一次試験以外の科目もあります。模試では前回の自分よりミスを減らすこと、制限時間内に解ける問題を増やすことを目標にしてください。
令和7年度の最終倍率はボーダーではない
警視庁の公表する令和7年度結果を、受験者数に対する最終合格者数の倍率として示します。年度の異なる令和8年度の正答率へ換算することはできません。
| 令和7年度の区分 | 教養 | SPI3 |
|---|---|---|
| Ⅰ類・男性 | 3.0倍 | 4.0倍 |
| Ⅰ類・女性 | 2.7倍 | 3.5倍 |
| Ⅲ類・男性 | 3.4倍 | 5.6倍 |
| Ⅲ類・女性 | 3.4倍 | 3.3倍 |
同じ区分でも受験者・採用予定者の構成は年度によって変わります。令和7年度はⅢ類女性でSPI3の倍率の方が低く、全区分でSPI3の方が高いとも言えません。「SPI3を選べば有利/不利」と倍率だけで断定せず、得意分野・準備時間・その年度の案内を合わせて判断しましょう。教養試験との違いは教養試験の記事でも解説しています。
SPI3対策の進め方|短期間でも最初にすること
SPI3は「慣れ」が得点に直結する試験です。解法の型を覚え、時間内に処理する練習を重ねるほど伸びます。目安は3か月ですが、残り期間が短くても順番を間違えなければ十分に戦えます。まずは次の3段階で進めてください(学習上の一例で、警視庁の公式基準ではありません)。
- 最初の1週間:一回分を時間を測って解き、言語・非言語・時間切れのどこで失点するか記録する。
- 基礎期:間違えた型の解法を理解し、同じ形式を再演習する。論(作)文と適性検査の準備も確認する。併願先で教養試験が必要な場合だけ学習計画に含める。
- 直前期:70分を通して解き、見直しと時間配分を修正する。出願日・会場・持ち物は公式の最新案内で最終確認する。
3か月で仕上げる場合の目安
| 時期 | やること | 到達の目安 |
|---|---|---|
| 1か月目 | 問題集を1周し、分野ごとの解法の型を覚える。時間はまだ気にしない | 全分野で「解説を読めば理解できる」状態 |
| 2か月目 | 間違えた問題を中心に2周目。1問ごとに時間を測る | 苦手分野が2〜3個に絞れている |
| 3か月目 | 70分の通し演習を週1〜2回。合間に論(作)文を書く | 時間内に最後の問題まで目を通せる |
残り1か月から始める場合の目安
| 時期 | やること |
|---|---|
| 1週目 | 通しで1回解いて現状を把握。二語の関係・語句の意味・割合・損益算など、型を覚えれば解ける分野から着手する |
| 2〜3週目 | 推論・速さ・集合・確率を1日1分野ずつ。毎日30分は時間を測った演習を入れる |
| 4週目 | 通し演習を2〜3回。新しい分野には手を広げず、解ける問題を確実に取る練習に絞る |
1か月しかない場合でも、論(作)文を後回しにするのは危険です。週に1本は60分で書き切る練習を入れてください。週ごとの演習メニューや1日の時間割まで決めたい方は、警視庁SPI3の勉強法(3か月・1か月の演習計画)に詳しくまとめています。
過去の合格者数や市販教材の模擬得点を、警視庁が未公表の合格点に置き換えないことが重要です。苦手を数え、毎週の演習記録で改善を判断しましょう。
SPI3以外の試験も含めて準備する
筆記試験だけで採否は決まりません。令和8年度の案内には、論文・作文、資格経歴等評定、適性検査、面接など区分と回次に応じた科目が並びます。SPI3を選ぶ場合も、自己紹介や志望動機の整理を後回しにしすぎないようにしましょう。面接対策の記事、論文対策の記事も参照できます。
警志塾では元警視庁警察官の講師による採用試験の相談を案内しています。実際のサポート内容や費用は、警志塾の公式サイトで現在の案内を確認してください。指導を受けても合格を保証するものではありません。
よくある質問
- 警視庁SPI3は自宅やテストセンターで受験できますか?
-
令和8年度の警視庁公式案内はペーパーテスティング方式と記載しています。SPI3一般にはテストセンターやWEBテスティングもありますが、警視庁の試験とは別のものです。
- 警視庁のSPI3ではどのような問題が出ますか?
-
公式案内では「言語的理解力や数的処理能力、論理的思考力等についての択一式の検査」とされています。SPI3一般では、言語は二語の関係・語句の意味・文の並べ替え・長文読解、非言語は推論・割合・損益算・速さ・集合・確率などが代表的な分野です。警視庁は分野別の出題数を公表していません。
- SPI3の合格ラインは何割ですか?
-
公表されていません。特定の正答率を合格点と断定することはできません。令和7年度の倍率は受験者数と最終合格者数の比であり、筆記試験の得点率ではありません。
- SPI3と教養試験は同時に受けられますか?
-
令和8年度の通常回では、出願時にどちらかを選択します。令和9年度前倒しⅠ類はSPI3が指定され、教養試験との選択制ではありません。受験回次ごとの案内を確認してください。
- SPI3を受ければ適性検査はありませんか?
-
いいえ。警視庁の採用案内はSPI3基礎能力検査とは別に適性検査を記載しています。
- いつから勉強すればいいですか?
-
残り期間と現在の理解度によります。目安として、3か月あれば「解法の習得→時間を測った演習→通し演習」の順で無理なく進められます。1か月の場合は、型を覚えれば解ける分野から着手し、通し演習の時間を必ず確保してください。
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確認に使った一次情報
- 警視庁|令和8年度警察官採用試験:試験方式・区分・令和7年度結果。
- 警視庁|令和9年度前倒し試験:申込期間・第1次試験日・Ⅰ類の方式。
- SPI3提供元リクルート|よくある質問:SPI3一般の実施方式。
確認日:2026年9月20日。募集年度・回次ごとに条件が変わるため、出願前は必ず警視庁の最新公表資料を確認してください。



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